お宝読本 タカラの山ガタ(匠に訊く)

四季折々の美味しい農産物、個性ある郷土料理、確かな技が生み出す伝統工芸品。
山形市には魅力あふれる地域資源「お宝」が沢山あります。
それぞれのお宝は、生産者や職人達の手により生み出され、そのひとつひとつには、様々な想いが込められています。
ものづくりに携わる方ならではの興味深いお話や、仕事に対して語られる熱い想い。
お宝づくりの最前線で活躍されるそれぞれの「匠」たちに、お話をお伺いしてきました。

建具

長い歴史を持つ山形建具。全国的にも評価が高く、高級建具としても知られています。
今回は長年建具職人として活躍されてきた、大滝建具製作所の2代目
「大滝正能(おおたきまさよし)さん」にお話をお伺いしました。



建具を製作するにあたって

建具はその部屋の雰囲気作りに一役買っています。私は下見をして、その部屋の構造、窓から見える風景、差し込む光・・・
諸々のバランスを見て製品作りをします。材質にもこだわり始めるととまりません。
まずはうまく開くこと、使いやすいこと。そしてお客さんの考えや好みに沿うこと。
これらは勿論のことですが全体のバランスもとても大切です。

製作において大切にしていることは

それは、お客さんの気持ちになること!お客さんが何を望んでいるのか、何にこだわるのか。
それらを実現しつつ自分の持てる技も見せる。
信頼して頼んでくれたのだから、その気持ちに応えなくてはという思いもでてくる。それは出来上がった製品にも表れます。
信頼関係はとても大切です。品物を見てもらうことがお客さんに対しての誠意ですから、製作過程も見てもらったりします。そうすることでお客さんにも納得していただけますしね。


完成した衝立。すべて手作業で作られています。


一番重要な工程はどこですか

細部、それから結合部分ですね。一番難しいのもそこ。組子でも同じ。
建具業界の言葉で「おさまり」と言いますが、おさまりをきちんとするには寸法が非常に重要です。
私が得意とする技法として蛇口(じゃぐち)工法がありますが、これも少しでもずれると組めないですし綺麗になりません。


蛇口工法 3つの部分が交わる部分が蛇の口のように(V溝)なっている。組子を組んだ時にぶれにくく、仕上がりも美しい。

蜀紅組(しょっこうぐみ)と呼ばれる組子デザイン。蛇口工法を使用して組まれている。

お客さんに伝えたいことは

いつまでも大事に使ってください。建具は長く使うことによってその家に染まって味がでてきます。
メンテナンスをすれば何十年でも使える。お客さんの家で大事に使ってもらっている父の作品を見たときは、とても嬉しかったです。

これからについて

地域の人々や、お客さんのためにも努力して良い製品づくりを続けていきたいと思っています。
昭和45年から45年間程創り続けているけど、まだまだ駆け出し、完璧だと思った仕事はありません。生涯修行です。
体力の続く限りお客さんのために一生懸命やっていかなくてはならない。
これからいつまで働けるか分からないけど、体力が続く限りこの仕事を続けたいと思っています。
死ぬまで勉強ってことです!


行燈(あんどん)の仕上げにかかる大滝さん。

曲がっている部分は薄皮一枚で繋がっている。繊細な技術が要求される技法である。


建具の技術を生かし、多種多様な作品作りに取り組んでいる。


建具への思いを熱心に語ってくださった大滝さん。
平成24年に山形市の技術功労者褒賞も受賞されており、高度かつ洗練された技術を持った熟練の職人さんでした。
その技術だけではなく、ユーモアのセンスと笑顔が魅力的な方です。
出来合いの既製品ばかりではなく、地域の素晴らしい建具屋さんに依頼してみるのもいいのではないでしょうか。


大滝建具製作所
場所  山形市十日町3丁目3ー10
電話  023-622-8669


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